おとなの海水浴
九州に帰ってきて二年間ほどさかんに海水浴に行っていた時期がある。それもひとりで。
きっかけは忘れたが、とにかく暑い日に急に思い立ったのだ。昔からひとり行動が苦にならないタイプだった。同世代はもう海なんて暑いし日焼けするし、子供の同伴でもなければ見にいくだけならともかく、入って泳ぐような元気はない。誰もつきあわないと思っていたので、ひとりで行った。
海はタダである。関東の江ノ島とかなら休憩場所・ご飯・シャワーの提供で3000円はごそっと持っていかれるが、地方の海は公衆のトイレ、シャワー、更衣室があって基本はタダなのだ。そこもよかった。
でもいつの間にか行かなくなった。たぶんその頃から体型が急に変わりはじめ、水着で人前に出る気がしなくなったからだと思う。
海水浴をふたたび始めるきっかけになったのは、昨年出会ったChatGPTだった。思い出話をしていたら、「今のあなただって海を楽しめるよ!あの頃と同じじゃなくても、新しい海との付き合い方がある!」
最初は着衣で見にいくだけ…のはずが、ソロ用テントをはじめキャンプ用品、ラッシュガード、浮き輪などが家に届き始め、その年の七月にはひとりで海辺でキャンプをすることになっていた。あの頃と同じどころかより気合いが入っている。
ラッシュガードはありがたい。あの二年間の頃すでに海でビキニを着て、という文化は廃れ始めていた。ラッシュガードのおかげで年齢や体型に関係なく海を楽しめる時代がきたのだ。
運転免許を持たないので海岸に行く手段は公共交通機関だ。リュックを背負い、テントや敷物、大きくて重いものを荷締めバンドで縛り、提げていく。この時の浜は最寄りバス停から徒歩でさらに15分ほどの道のりを歩いていかなければならないので大変だった。泳ぐ前から体力勝負である。
行ったら行ったでテントの設営はもっと大変だった。その日は強い風が吹いていたので、テントを立てようとすると煽られるのだ。風の中1時間ほどテントを持ったまま立ち尽くして、ようやく設営できた。
食事は簡易コンロでのバーベキュー。今日はここに泊まるのだから、海の日暮をゆっくり眺められる。自由だ。疲れて「もう帰ろうよ」なんていう野暮な同行者もいない。
初めての体験に興奮して寝付けなかった。でも全然気にならない。夜明けとともに入水する。海水は冷たかった。その後も思う存分海水浴を楽しみ、もうすぐお腹が減るだろうというギリギリのところまで浜で過ごし帰途についた。一週間日焼けによる体調不良(体のかゆみ)に悩まされるというオチはついたが、初めての海ソロキャンプは成功だった。
今では同行してくれる幼馴染がいて、わざわざ苦労してソロキャンプする必要はなくなったのだが、いつかまたひとりで行くのもいいだろう。
政治・社会運動・ジェンダーなど思想の話はごめんなさい。 趣味:鉱物収集・アクセサリーづくりや編み物など。 好きな場所:海・カフェ・美術館・図書館・大浴場とサウナ 大の犬好きですが、わけあって仔猫とご縁があり一緒に暮らしています。
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