山鳩の鳴き声と記憶
換気扇の下で微かにいろんな生活音が聞こえ耳を澄ませているとにゃーにゃーと聞こえてきた。春だし猫なのどんな猫かなと想像しながらバルコニーへ走ってく途中カラスの声だとわかりがっかりして足を止めた。
買い物にと家の敷地外に出たところで山鳩の声が聞こえてきた。
「ホーホー ホッホー」「ホーホー ホッホー」
この声を聴くと途端に5歳の頃に預けられた父方の祖父母の家の近くにある大きな木のそばに立っている。葉が生い茂りそこは少し暗い場所。何の音かわからずじっと耳を傾け聴いていた。後に山鳩の鳴き声だとわかった。いつもこの鳴き声を聴くとその時の空間に意識が連れ戻される。
音の記憶はすごい。その音を聴いた途端考える間もなく時間を飛び越えてその場が再現されてしまう。それを聴いていた時の空気、気持ち。周りの景色。祖母は私が6歳の時、祖父は12歳の時に亡くなり間もなくその家は取り壊され土地は売られた。Google mapで見たら今は同じような形の家が建っている。
祖父母の家のそばではよく山鳩が鳴いているのだった。山鳩がこのように鳴くのは雌への誘いやアピールなのだそう。祖父母の家に預けられていたのは多分1年足らず。その短い間の記憶。
普段よく聞こえてくるならそうはならないのかもしれない。1年に数えるほどしか聞かない気がする。この声が聞こえるたびにフラッシュバックしてる。
今回その声の主をこの目で見つけた。電線にとまって後ろを向いてまた鳴いた。鳴くたびに電線はそのリズムで揺れる。
鳴いてる姿を実は生まれて初めて確認した。あの5歳の時に聴いた声の主の姿をちゃんと確認できたような気持ちになってなんだかうれしくなった。
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