火葬場へ

火葬場へ

ꀘ꒐ꑄꋬ꓄ꉻ

ゴォーン ゴォーン ゴォーン

その大きな部屋に入ると建物全体が大きい音を立てていて揺れてるようにさえ思った。音の発生源である黒い扉が並びその奥で燃えているのを想像する。 久しぶりの火葬場。ここは初めて訪れた。

火葬炉の扉が開き真っ白な骨が露わになっている。骨上げ台に運ばれ係員に招かれ収骨儀式。

係員から骨の説明が始まった。「ここは喉のあたりの… 。」このあと骨壷に入れられる流れになると思ってたら係員はじっと骨を見つめていたと思ったらその中から見つけた骨を白い手袋をした手でそっと持ち「こちらは顎でこれが耳から顎への骨で…」と次から次へと丁寧に小さな骨を見つけてはこのようになってますねと組み立てて見せてくれる。

こちらもついなるほどと言いながら身を乗り出し感心していた。そのまま頭の骨を恐竜の骨のように組み立ててくれないかなとさえ思ってふいに気づく。高齢で何ヶ月か前より余命を知らされ本人は苦しまず命を終えていたせいか不思議なほど悲しむ気持ちは起こらず参列者もしずかに事の次第を終えるのを見守っている。

もし亡くなったのが若者だったならと、この時頭の片隅を横ぎった。「これが顎の骨で…」と係員が持って説明するのを心しずかに見ていられるなんてできないだろうと。いやそういう場合はこのような説明の仕方はしないかもしれない。説明してるうちに身を乗り出して聞いている私たちの様子からつい説明したくなってしまったのか。今回たまたまなのかいつもそうなのか聞きたくなったけれどもとても聞けるような空気ではなくただ事の成り行きに任せた。

火葬場といえば一番最初に行ったのは6歳のとき。祖母の葬儀だった。朝 目が覚めたとき隣に寝ている祖母の顔に白い布が被さっていてふざけてると思ってパッと布を取った。笑顔で応えると思ったのにまだ寝ているふりをしているので唇の端っこに指を掛けてグイッと引っ張ったら唇が引っ張られたまま戻らずヨダレが祖母の口から流れる。それでも全く動かないことに変だなと思ったそのとき、父がその様子を見つけて…そこまではよく覚えているけどおそらくそっと注意されてまた白い布を被せたのだと思う。まだ人が死ぬことがわからなかった。

祖母が入った火葬炉には小さな穴にガラスのようなものが嵌められておりそこから見えるようになっていた。何故そのような仕様だったのか。皆その穴から燃えてることを確認していたんだろう。叔父が私を抱っこしてその穴から見えるようにしてくれた。その穴を覗き込んだ。燃えている火しか見えなかったけれどおばあさんが燃やされているんだなと思って見ていた。

火葬場に行くたびにその6歳のときのおばあさんの火葬を思い出すのだった。

今回の火葬場の建物はまるで美術館のような佇まい。津波で被災したあと美しく蘇っていた。

非日常的で静かなその空間はそっと生きている私たちを見守ってくれてるように感じられた。

ꀘ꒐ꑄꋬ꓄ꉻ
ꀘ꒐ꑄꋬ꓄ꉻ @kisatomii.bsky.social

空と時々の記録 🔗 https://lit.link/kisatomii

まだコメントはありません