古いカードの思い出 前編
いよいよ引越しが数日後に迫った今日。わたしはまだ荷造りをしていた。
小物を整理していたら、古いカードケースが出てきたのだ。ぼろっぼろで、ところどころが朽ちている。
どんなカードを入れていたか気になって中身を見た。
もうおそらく行く予定のない医院の診察券なども出てきてしまった。あーここはあれでお世話になったなとか、この医院って最近潰れたんだっけとかいろいろ思い出した。そしてその中から、大阪の西成にある病院の診察券が出てきた。
わたしは一時期西成で一人暮らしをしていた。本当に短い期間だから特段語れることも少ないが、この病院に多大なるご迷惑をおかけした時のことを書こうと思う。
ある年の暮れ、まだ世の中にはコロナが蔓延していた時期だった。仕事を納めきったようなそうでないような気持ちで、わたしはその年最後の勤務を終えた。
そうして、エントランスに差し掛かった時である。ちょっと前にわたしより早く出ていったはずの同僚が、そこで立ちすくんでいた。
「鉈実さん、ちょっと困ったことが」
なんだろうと思ってその人が指さす方を見ると、そこに黄土色の毛並みをした猫がいた。おそらく野良猫だ。猫がどうかしましたか?
「ずっと動かないんです。わたし猫アレルギーだから触れなくて……」
そっかあ、とわたしは軽い考えで猫に近寄り、しっしと手を振った。動かない。しかし威嚇してくる様子もない。ならばと頭を撫でようとした時だった。
がぶり。
ええー、噛まれたんですけど。てか痛っ!
にゃー。
ええー、そんで逃げたんですけど。噛み逃げ? 信じらんなーい。
「大丈夫ですか⁉️」
「いやー噛まれちゃいましたね……」
「あれ野良猫ですよね……やばくないですか、絶対病院行った方がいいですよ」
「え、そうなんですか……」
帰ったらすぐ病院に行こう! そう思って家に着いた瞬間、わたしはなんと――。
寝た。すぐに。家の床で。
言い訳させてください。疲れてたんです。その年最後の勤務日で、家に着いたら緊張の糸がプツンと切れたんです。
この時はまさかあんなことになるとは思っていなかった……。
[長くなってきたので後半に続く☝😁]
思考の整理と日記。
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