(10)合衆国憲法修正第1条(いわゆる表現の自由)
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合衆国憲法修正第1条
“連邦議会は、国教を樹立し、若しくは信教上の自由な行為を禁止する法律を制定してはならない。また、言論若しくは出版の自由、又は人民が平穏に集会し、また苦痛の救済を求めるため政府に請願する権利を侵す法律を制定してはならない。”
出典:アメリカ合衆国憲法 - Wikisource https://ja.wikisource.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E5%90%88%E8%A1%86%E5%9B%BD%E6%86%B2%E6%B3%95
日本では本条項が内容の詳細に触れられることなく、単に「表現の自由」条項=「修正第1条」として言及されることが多い。しかし実際には、信教の自由、言論・出版の自由(表現の自由)、集会の自由、そして政府への請願権を規制する法律の制定そのものを禁じる規定である。
日本や欧州の憲法では「表現の自由は、これを保障する」といった文脈で規定され、公共の福祉や他者の権利との調整を考慮した保護がなされる。これに対し米国では、連邦政府(のちの判例により州や自治体にも拡大)が表現や信教を制限・規制する法律を作ること自体を禁止するという、いわば消極的・ネガティブなアプローチが取られている。
こうした原理原則主義的な規定は、時に政治の現場で極端な結果をもたらす。政治資金規制をめぐっては、連邦最高裁が「政治支出も言論の自由である」と判断したことで、スーパーPAC(独立支出委員会)による無制限のネガティブキャンペーンCMが解禁された(2010年シチズンズ・ユナイテッド判決)。さらに、個人が政治活動全般に提供できる寄付総額の上限も撤廃されたため(2014年マカッチョン判決)、富裕層が巨額の資金を政治に投入できる構造が完成した。
この膨大な資金力は、本来であれば多極化するはずの多様な政治的動機や主張を飲み込み、予備選制度(党員集会など従来の選考方法が州の選挙制度になったことで党の古参・いわゆるボスザル的な政治家の影響力が大きく減じられた)を通じて既存の二大政党制の枠組みへと吸収していく。
結果として、草の根の運動や草の根候補も二大政党のいずれかに属して戦わざるを得ず、対立がより尖鋭化した「二極化(分極化)」を極限まで推し進める原動力となっている。この仕組みは共和党側に有利に利用されがちに見えるが、民主党のオバマ大統領も2008年選挙で自ら公的選挙資金を辞退し、巨額の民間資金調達を駆使して勝利するなど、陣営を問わず活用されてきた。修正第1条という憲法上の壁がある以上、この資金と二極化をめぐる規制が強化される可能性は極めて低いのが現状である。
朝「えみり既読おそーい」(『違国日記』6巻より)
米国政治キーワード
- 1 (1)有権者たち
- 2 (2)激戦州・部族主義・大統領令
- 3 (3)統合軍・連邦議会・大統領府
- 4 (4)大統領の人事権・国防省
- 5 (5)参考図書
- 6 (6)激変中の人種民族構成比
- 7 (7)選挙人制度と連邦議員定数
- 8 (8)合衆国憲法修正条項
- 9 (9)合衆国憲法第1条第2節第3項 「5分の3」条項
- 10 (10)合衆国憲法修正第1条(いわゆる表現の自由) This article
- 11 (11) 憲法修正第25条 大統領・副大統領の継承
- 12 (12)予備選挙制度
- 13 (13)徴兵と州兵制度
- 14 (14)白人福音派
- 15 (15)連邦司法省と法執行機関、検事制度について
- 16 (16)党派・人種民族別支持者比と上院人種民族構成
- 17 (17)フランクリン・D・ルーズヴェルト大統領
- 18 (18)ハリー・S・トルーマン大統領
- 19 (19)合衆国連邦裁判所と移民裁判所
- 20 (20)連邦最高裁会期制と健康保険制度メモ
- 21 (21)“Mahanoy Area School District v. B.L.” 判決
- 22 (22)アメリカ合衆国連邦職員数と「政府効率化省」
- 23 (23)フィクションにおけるアメリカ合衆国の核戦争 映画編
- 24 (24)アメリカの教育・図書館に干渉する宗教右派
- 25 (25)フィクションにおけるアメリカ合衆国の核戦争 テレビドラマシリーズ編
- 26 (26)アメリカ人の夢
- 27 (27)CVN-81を巡って アメリカ海軍航空母艦命名考
- 28 (28)『若きワシントン』とアメリカの歴史映画
- 29 (29)ワイオミング州
- 30 (30)カリフォルニア州
- 31 (31)ニューヨーク市
- 32 (32)ディアボーン市とヒスパニック系大統領はいつ誕生?
- 33 (33)アメリカの州司法行政と検察
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