米国政治キーワード 第25回 / 全25回

(25)フィクションにおけるアメリカ合衆国の核戦争 テレビドラマシリーズ編

m.s. and bluebird
目次

『マダム・セクレタリー』(2014-2019)

ある事件により昔の上司(大統領)からの指名で国務長官に就任、元CIAアナリストで大学教授のベス(エリザベス)・マッコードは外交の世界から政治の世界へと入っていく。

2014年シーズン1が放映されて、2019年シーズン6をもってフィナーレを迎えた。

そんな作品の脂が一番乗っていた時期のシーズン4最終話の傑作エピソード。

あらすじ ある晴れた週末の朝、事件は起きた。全面核戦争の第一撃、無数の弾道ミサイルが北米大陸へ向けて降り注ぐ状況図の中で国防総省(劇中世界の設定?)の戦略指揮所は即時反撃を求め大統領の核戦争権限の確認、そして大統領による核報復攻撃命令へと進んだがーーー。

虚構描写らしいものもあるが、STRATCOM(戦略軍)やICBMサイロ、指定避難者、公表されていないが実在はすると言われている指定避難者向けバンカー(本作ではマウントウェザーにあるとしている)などたっぷり描き込まれている。

ダルトン大統領は首席補佐官や国家安全保障担当補佐官、国防長官から「この日のために我々は準備してきたのです」と言われ、国民の負担で築き上げた核兵器体系を使わずに負ける事はあってはならないと進言している。

また後半でベスが核抑止体制について大改革を構想して動くが、その事にゴードン国防長官がブチ切れてベスに文句を言いに来るが、核戦略の硬直性を見事に再現していた。

マッコード国務長官の首席補佐官もまた指定避難者で友人の前から忽然と姿を消す。その友人(部下でもある)はネチネチと指定避難者でいいなと言われるが、彼は一切認めず、ただ指定避難者はバンカーに潜りアメリカが壊滅したのちに地上で文明再建にあたるが家族とは死に別れてるんだぞと言って非人間的なシステムだという事を告げている。

『マダム・セクレタリー』は大半が国務長官としてのベスを描いている。国務長官として自らすぐ飛んでいって相手と話し合い、時に脅し、時になだめて着地点を見出すという役割ゆえの面白さが魅力のシリーズだった。ベスから見たダルトン大統領についてはしばしば憲法修正条項と大統領という組み合わせについて描いていてその中には修正25条もあって大統領の職務遂行不能を閣僚が宣言する場合の手続きへ至る道程を描いたエピソードもあった。

最終シーズンは大統領としてのベスが描かれたが大統領は制約が多すぎて機能せず、それまでの半分の話数で終了することになった。それでもこのシリーズがイランやウクライナ、ロシアを相手とした外交を描き、異常気象、合衆国憲法改正案の中でも惜しいところで批准されなかったERA(男女平等権修正条項)などにも挑んだその姿勢は素晴らしいものがあったと思う。この観点でも本作はおすすめの一作といえよう。

番外編:『West Wing』(1999-2006)

日本では『ザ・ホワイトハウス』というタイトルで放映された。全7シーズン。

ノーベル経済学賞を受賞した学者のバートレットが政治の世界に乗り出し知事から大統領となってしばらく経過したところから始まり、次の大統領選挙でおデッドヒートから新大統領の就任式まで描かれている。

本作は軍関係の描写は少ないが、大統領とその周囲の描写は秀逸。また後半で描かれていく大統領予備選から本選への道のりは映画『スポットライト』の脚本で知られるジョシュ・シンガーが後半シーズンで脚本(途中からストーリーエディタにも)として関わっていて迫力ある大統領選を描いていてこちらもおすすめ。

m.s. and bluebird
m.s. and bluebird @bluebirdflyagain.bsky.social

朝「えみり既読おそーい」(『違国日記』6巻より)

まだコメントはありません